Special column

服との付き合い方

スーツメンテ.COMなら
渋々出していたクリーニングが
楽しみに変わる。

ユナイテッドアローズ
クリエイティブ・アドバイザー

鴨志田 康人

YASUTO KAMOSHITA

1957年生まれ。
ユナイテッドアローズの創業に参画し、メンズクロージングの企画、バイイングを担当。その後クリエイティブディレクターを務めた。
現在はクリエイティブ・アドバイザーとして同社に関わるほか、2019年より日本におけるポール・スチュアートのディレクターを務めるなど、活動の幅を広げている。

僕は大事にしている服をクリーニングにはあまり出さない。テーラードジャケットにおいては何年かに一回出す程度である。通常のドライクリーニングでは毛織物の風合いを損ないがちなのがその理由だ。プレスの上がりが気に入らないこともある。特に手仕事の多いジャケットに容赦なくアイロンを押し付けられると、細部の膨らみの美しさが失われてしまう。
そういう訳で、もっぱらブラッシングをこまめに行いアイロン掛けも自分でする。とはいえブラッシングだけではどうしても落ちない汚れもあるから、そういう時に限ってはたまに信頼できそうなクリーニング屋さんに出している。

寺前さんが経営するワードローブトリートメントは安心してクリーニングを預けられる工房で、以前から利用させていただいていた。寺前さんはもともとユナイテッドアローズのお客様で、僕も接客を通して知り合った間柄である。イタリア製のテーラードジャケットなどをお召しになられるお洒落な方なので、クリーニングを頼むのもどこか安心できたのだ。
先日久しぶりにご連絡があり、「スーツメンテ.COM」というスーツに特化したサービスを始めたので試してみてほしいと頼まれた。

大変ありがたいお申し出だったので早速2着のスーツをお預けした。1着は夏物で、汗染みが目立っていたのだが見事に新品のようになって戻ってきた。もう1着は20年ほど前に仕立てたスーツで、だいぶよれてきたので試しに出してみたが、仕上がりは期待をはるかに上回るものだった。いささかパサパサした肌触りだったのがモッチリとしなやかな風合いに生まれ変わってきたのだ。
難しいことはよく分からないけど、寺前さん曰く、いろいろ研究してみて洗剤に馬脂を混ぜることで抜群の効果が得られるらしい。(これは企業秘密にならないのか念のため確認したら、他社で真似はできないから大丈夫と太っ腹な返事をいただいてます(笑)

アイロン掛けも流石の一言である。首周りと肩周りのアイロンの掛け方はテーラーの仕事そのものである。クリーニングで歪みがちなアームホールのフィット感も改善されているようで着心地までよくなった気がする。
それもそのはず、テーラードジャケットを仕立てていたベテランの職人さんを新たに雇い入れたそうだ。工房内の画像を見せてもらったが確かにプレス機の設備も充実している。しかしそれ以上に、テーラードを熟知している技術者の腕があってこその仕上がりなのだろう。

質の良い服というのは着込むほどに良い塩梅にへたってくる。とはいえ古ぼけた感じになってはいけない。使い込んだ漆器のように美しさを保ちながら経年していくことが、僕に取っての理想とする服との付き合い方だ。寺前さんが⾧年かけて開発してこられた独自のクリーニング技術は、それを叶えてくれる強い味方になってくれそうだ。渋々出していたクリーニングが楽しみに変わった。

Contact

サービスについての疑問・質問や、お申し込み後のお問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。